嫌い嫌いで大嫌い

気付いた…私あの先輩のこと苦手なんだ…。


と、いうのも話は1ヶ月前に遡る。

ガチムチ体型で優しい性格の先輩は、うちの職場で一番人気の男性職員だ。私も推しメンをきかれたら彼を答えるようにしている。しかし、特に話したこともないのでどういうところが推しなの?ときかれたら「ガチムチなところ」としか言いようがない。

既婚者で二児の父であるその先輩と、先月初めて夜勤がかぶった。大体暇な時間になると恋愛話をしたがるのは、恋愛というのは大体多くの人が興味を持ってる共通項だからか。


「今彼氏とかおらんの?」

「いないですよ〜好きな人がいるから、前の彼氏とはわかれました」


語弊がある。これだと私はもともと彼氏は好きだったが新たに好きな人が出来たので別れた女になってしまう。正確には、ずっと、年単位で好きだと思い続けてる相手がいるが、不毛な片思いなのでそろそろ現実を見ようと彼氏を作ったものの、彼氏のことをどうしてもその人以上に好きになれず、別れてしまったのだ。

世間体に流されて幸せになろうとするといけないという教訓になった。今の恋を続けていても不毛だが、少なくとも彼氏がいた頃のように針の上を歩くような辛さはなかった。元彼には悪いが、勉強になった…今後はとりあえず自然に諦めるタイミングを見つけて、その後にもう少し不毛じゃない恋を…いやそんなもん出来るのか?分からないが、とりあえず諦められるように出来ることをしてみるしかない。


自分の幸福のために元彼を利用したひどい女に、先輩は言い放った。


「あー、いいねえ。そういう好きな人がいるっていうの。羨ましい」


先輩は既婚者である。


「え、先輩、結婚してるじゃないですか」

「結婚してても好きな人とか欲しいなって思うよ」


その人に対して勝手に幻滅した。いや、多分元々嫌いな相手であってもそれ以上に嫌いになってたし、元々何にも思ってなかった人であっても少し苦手くらいの部類に入るくらいの発言であった。少なくとも私にとっては。


私はかなりのロマンチストだ。結婚って何のためにするの、と言われたら「好きな人と一生一緒にいる権利を持つため」と即答するし、結婚はやはり好きな人とするべきだと思う。相手の嫌な面が見えて離婚したいと思うのなら、それはそれでいいと思う。

しかし、現在結婚していて、離婚意思がない。そんな状態の「好きな人がいることが羨ましい」。それはだめだ、受け付けない。好きだから結婚したんだろうし、一番好きな人と家でいつも会えるのになんで好きな人欲しいの?不可解だ。


そして今月の夜勤でも。


「彼氏と別れて結構経ったもんね、そろそろ次かな」

「あー、好きな人いるから勘弁してぇ…」


いや彼氏って作りたくて作るもんなんか…好きだから恋人になるんと違うんか…いや、私が言えた話じゃないけど。


「好きな人って同期?」

「いや、かなり年上で」

「へぇ、もしかして結婚しとる?」

バツイチですね」

「子供は?」

「いないみたいです」

「じゃあハードルさがるじゃん」


お前はハードルの高さで好きになる女決めるんか?面白いな。

と、思ったが黙っておいた。

私も同じようなことをしたからだ。スペックを見て好きになる相手を決める…そういうのよくない、と思いつつ同じことをしている。


なんだか…嫌な感じだ。


被害的に受け取ると、打算で結婚した、好きになる人を相手の背景で決めるべき、と言われたみたいで心苦しい。最悪だ。そういう面が人間誰しもあっていいと思うけど、それを私に押し付けるな。


久々に…久々に、真っ向から自分の考え方を否定されたようでテンションが下がってしまった。